SORACOM Blog

ソラコムの最新情報をお届けします

SORACOMサービスリリース講演 全文書き起こし (1)

本日より全3回にわたり、2015年9月30日に行われた、ITpro EXPO 2015 特別講演をベースとしました書き起こしをお届けします(スピーカー:株式会社ソラコム 代表取締役社長 玉川)。

当日会場に来られなかった方も、ぜひダイレクトな言葉でソラコムを感じていただけると幸いです。

IoTの課題とIoTプラットフォームSORACOM

ソラコムは、創業以来、「IoTプラットフォームを創っている」とだけ公開させていただいておりました。我々のチームは、開発に集中するため、チーム一丸となってステルスで取り組んできました。いよいよ、本日2015年9月30日、IoTプラットフォーム「SORACOM」 (以下、SORACOM) をリリース致します! SORACOMは、本日から、すぐに使っていただくことができます( https://soracom.jp/start/ )。

さて、SORACOMとは何なのか、を説明する前に、まずIoT(Internet of Things、”モノのインターネット”)が盛り上がっている背景を振り返りたいと思います。

IoTの可能性

こちらIoTの文脈が語られるときによく目にする図ではないでしょうか?

右側のクラウド。私もAWSの日本事業立ち上げに過去5年ほど携わっていましたが、クラウドの近年の進化はすさまじいものがありました。例えば、Amazon S3でデータをクラウドに保管すると1GB(ギガバイト)あたり一ヶ月保管して3円くらい。少し前からすると隔世の感が有り、データは捨てずにとりあえず入れておくということが可能になりました。とりあえず保管しておいて、Amazon EC2などのコンピューティングパワーを使って計算すれば、例えば、人工知能などによる解析やデータの可視化のようなことも出来ます。

左側のモノ。スマホ・タブレットも普及してきていますし、アップルウォッチのような時計やドローンのような面白いデバイスも出てきました。さらに、Raspberry PiやIntel Edisonなどを使ったラピッドプロトタイピングも広がってきて、Makersムーブメント(デジタル製造の潮流を指すトレンド)のようなものも起こっています。

当然のように、右のクラウドと左のモノをインターネットで繋げばいろいろおもしろいことができます。これはもう必然の流れで、IoTは可能性に満ちあふれています。ワクワクしませんか?

IoTの課題

一方で、IoTはまだまだ実証実験段階であり、実用化には時間がかかるという見方もあります。確かに、実際にモノからインターネットに接続しクラウドで解析する、といったごく典型的なIoTシステムを構築する際にも、様々な課題が浮かび上がります。

まず電力供給。ある容量の中に押し込められるバッテリー量は10年かかっても2倍にもなっていないと聞きます (一方、CPUは10年で100倍のオーダーにもなっています)。

それから「インターネット接続をどうやってやるの?」という話があります。最近は近距離無線にごまかされている感じがあるんですが、IoTデバイスが最終的にはインターネットに繋がらないと、”Internet” of Thingsにならない。BLEだけじゃIoTにならないですよね。スマホテザリングで繋げばいい、という話がありますが、スマホテザリング系の製品は、利用者があきたら面倒くさくなって繋がなくなる。インターネット接続も解決されていないですね。

モノがインターネットに繋がって、データを上げるとなるとセキュリティってどうなるのという課題があります。エンド・トゥー・エンドで、モノからクラウドもしくはサーバーまで、一貫したセキュリティを保つにはどうすればいいかという問題について良い解がありません。

一方で、セキュリティを保つために、モノ側に高価なCPUをいれたり、デバイス認証のような仕組みを入れると、全然小型化できなくて、コストも高くなり、沢山のデバイスを置けず、という堂々めぐりになります。

こういう課題にたいして、私達はプラットフォームで解決したいと思っています。

IoTの通信の課題

まず非常に厄介な「インターネット接続」のところをみてみましょう。

IoTシステムの図とかで、あって当たり前、的に書かれている(もしくは省かれて書かれていない)のが通信ですね。しかし、実際にIoTシステム構築しようとするとすごく難しいことがわかります。有線LANがあれば最高ですが、ある場所は限られている。無線LANはかなり普及していますが、セキュリティに懸念があり、設定自体も簡単なわけではない。例えば、おばあちゃんにデバイスをおくって、「無線LAN設定して」といっても普通できないので、そういうIoTデバイスは、人を派遣せねばならずインストレーションコストがかかる。

普通に考えると、インターネットに繋げる部分はモバイル通信が最高です。移動できるし、すぐつながる、どこでもつながる。ただし、モバイル通信は、これまでは、人向け、つまり人が見るスマホに対して作られてきたものなので、当たり前なのですが単価が高い。大手携帯キャリアのSIMだと月5000円。最近の格安SIMでデータ通信のみだと1000円を切りますが契約事務手数料が高かったり固定期間契約だったりする。また、どちらかというと通信をすれば良い、という形式で、多数のモノの通信回線そのものを管理したり、セキュリティを考えたり、という側面がない。

いろいろなIoTデバイスのスタートアップや新規事業の人と話しましたが、IoTデバイス込のIoTシステムを作っていると、結果的にランニングコストの大半が通信費用になってしまうという話も聞きます。また固定契約期間や最低契約枚数など調達方法に柔軟性がないことも課題でした。多数のIoTデバイスの通信SIMを管理するのは非常に大変です。

このインターネット接続の部分をテクノロジーで解決するとIoT業界が盛り上がるのは間違いないと感じ、自分たちで通信事業を始めようと決心しました。

通信事業をやるには

では、我々のようなベンチャー企業がどうやって、IoT向けの通信事業をはじめればよいでしょうか?そもそも通信事業はどうやれば良いのでしょうか?

少し業界構造の話になりますが、大手携帯キャリア様は、基地局やデータセンターを持っています。ここでパケット交換したり、帯域制御したり、顧客管理したり課金しています。さらにISP (インターネットサービスプロバイダー)をやっていて、ざっくりというとこの3つ全部やっているんですね。

私達が通信やりますといったときに、一番は簡単な方法は、キャリアからSIMを買って売る。2000円で仕入れて2500円で売ると言う形ですね。例えば、いわゆるMVNO (仮想移動体サービス事業者、Mobile Virtual Network Operator)、楽天様やイオン様がやられていると思いますが、基本的にはこのスタイルです。ブランドとか販売網の強みで売っていく戦略です。しかし、我々のようなスタートアップにはブランドもないですし、このモデルは適していません。また、このモデルには技術的なイノベーションを起こす隙間もありません。

逆側の、一番突っ込んだやり方をすると、基地局、データセンター、ISPの全部はできないけど、キャリアの基地局部分を借りて、そこに専用線をひくというアグレッシブなやり方があります。業界用語ではL2卸契約というのですが(レイヤー2で繋ぐのでL2卸契約)、キャリアさんと契約をしてMVNOになるというやり方があります。この場合、自分たちでデータセンターをもってパケット交換器、テレコムインフラベンダーから数億円のものを買ってきて、ISPをやるという、基地局以外を全部やるというやり方です。 これは、初期費用が10億円以上かかるので、これもベンチャーには適していないと考えています。

SORACOMのユニークなアプローチ

ただし、ソラコムにはブランドや販売チャネルや10億円のお金はありませんが、我々にはアイディアと技術力があります。これらを買ってこなくても、AWSの上でつくれるんじゃないかと。

そこで、キャリアの交換機から専用線を引いて、これらのシステムをAWSクラウド上で作ったのがSORACOMです。よりテクニカルに言うと、LTE/3Gのコアネットワーク(パケット交換、回線管理、帯域制御)とサポートシステム(顧客管理、課金)をクラウド上に実装し、そのパケット交換機能がキャリアのコアネットワークと L2卸接続をしています。

ある意味、開発費以外とL2卸接続の接続費用以外は、初期投資もかかっていませんし、全部AWS上でクラウドネイティブ設計で作ってしまったので、非常にスケーラブルで高可能性であるように設計しています。しかも、今までのパケット交換機は、人向けに作られているので、一人あたり1セッションから数セッションで、高速につながる通信ということに特化しているのですが、我々、IoT向けなので、それこそ10万、100万、数十億みたいなモノが、あまりデータは流れていないけどつながっている、そういうものに最適化したような仕組みを作ったということです。

NTTドコモ様の基地局を借り、専用線でつないだAWSのクラウドの上で実装する。我々はAWSとドコモの両巨人の方にのったバーチャルキャリアのようなものです。初期投資をあまりかけず、お客様が増えたら増えた分だけインフラを拡張することができるのでムダがない。その分、料金を値下げして幅広い層に使っていただけるプラットフォームを提供することができます。

第2回につづく

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