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[イベント開催報告] 2015/11/27 集まれ!IoT/ハードウェア スタートアップ by SORACOM

ソラコムの小熊です。

去る 2015 年 11 月 27 日、SAP 様に素敵な会場をご提供いただきまして「集まれ!IoT・ハードウェア スタートアップ by SORACOM」というイベントを開催しました。

イベントには IoT やハードウェアのスタートアップ企業の皆様はもちろんのこと、大企業で新規ビジネスを起こそうとされている方々、投資家や弁護士そしてメディアといった方々まで参加者・登壇者としてお集まりいただき、とてもアツいひとときを皆様と共有することができました。

そんなわけで、イベントの様子を振り返りつつ、当日来られなかった皆様にそんな会場の熱気を少しでもお伝えできればと思います。

ソラコムよりアップデート

まずイベントの最初に、ソラコムより以下の2点のアップデートを発表させていただきました。
(余談ですがソラコムではイベントに来ていただいた皆様に常に少しでも新しい情報をご提供しようと心がけていますので、仮にソラコム主催のイベント全てに参加されたとしても毎回何か新しい情報をお持ち帰りいただけるものと自負しております)

SORACOM Air メタデータサービス

まずひとつめは SORACOM Air に追加されたメタデータサービス機能です。
メタデータというのは、通信しているその SIM 自体の情報のことで、たとえば SIM の ID である IMSI や、SIM に設定されているタグの情報、現在のスピードクラスの設定などをパスワードなどの認証不要で取得することができます。

また、セキュリティ上の理由からデフォルトではメータデータは Read only (取得するだけ)なのですが、コンフィグによってメタデータの更新も可能とすることができますので、SIM の入ったデバイスが自分で自分の速度を変更するといったことがとても簡単に実現できます。
(設定可能にする場合は悪意を持った人に簡単に情報を変更されてしまわないように十分お気をつけいただく必要があります)

この機能があると、あんなことやこんなことができそうでワクワクします。個人的にはとても好きな機能です。

詳しいことはこちらのプレゼン資料、ブログ記事、および開発者サイトよりご確認ください。

集まれ!IoT/ハードウェアスタートアップ by SORACOM 14ページ目より

SORACOM Air メタデータサービスのご紹介 – SORACOM Blog

SORACOM Air メタデータサービス機能を使用する | Getting Started | SORACOM Developers

SORACOM Beam UDP to HTTP(S) 変換

次に発表されたのが、SORACOM Beam に追加された UDP to HTTP(S) 変換機能です。

IoT デバイスから UDP で送信したデータを SORACOM Beam で HTTP もしくは HTTPS に変換してお客様のサーバへとデータを送信する機能です。

IoT デバイス側で HTTP(S) を使うのが難しい場合や、デバイス側のプログラムを少しでも簡単にしたい場合、もしくは少しでもデータ通信量を減らして課金額を下げたり電力の消費を抑えたりしたいという理由から TCP や UDP といったシンプルなプロトコルで通信をしたいという需要がある一方、データを受け取る側のサーバーは HTTP(S) 以外のプロトコルに対応するのはいろいろな意味で難しいという問題がありました。

SORACOM ではそのような課題を解決するために、デバイス側からは TCP でデータを送信していただき、それを HTTP(S) に変換してお客様のサーバへとデータを転送するという SORACOM Beam のプロトコル変換機能を提供してきました。

今回、ここに UDP から HTTP(S) への変換機能を追加した形になります。

詳細は以下のスライドおよびブログ記事をご確認ください。

集まれ!IoT/ハードウェアスタートアップ by SORACOM 36ページ目より

SORACOM Beamが新たにUDP to HTTP変換に対応 – SORACOM Blog

このように SORACOM ではクラウド上で動作するソフトウェアを開発すれば機能追加ができるというメリットを最大限に活かし、今後もどんどん便利な機能を追加していく予定ですのでご期待ください。また、「こんなこといいな、できたらいいな♪」と思われたらソラコムのイベントで登壇するついでに要望していただいたりすると実現される可能性が高まるかもしれません。

会場内の風景(その1)

会場内の風景(その1)

ガリバー 許 直人 様

ソラコムからのアップデートの次は、スポンサーしていただいたガリバーの許様からお話をいただきました。

自動車業界は日本だけでも年に5兆円以上の市場規模をもっているというお話や、一説によると国内で保有されている自動車のうち ある瞬間に使われているのはたったの3%(残りの97%は駐車場などに停まっている)というショッキングなデータが紹介されていました。たしかにこの遊休リソースを何かに活用できたらすごいことができそうですね。

IoT で面白いことをいっしょにやりましょうということでしたので、我こそはという方、ぜひ SNS 上で許様を見つけてコンタクトを取ってみられてはいかがでしょうか?

スタートアップによるピッチ 8 連発

続きましてはスタートアップ企業によるピッチ 8 連発でした。
サクサクっと内容を簡単に紹介していきます。

株式会社フォトシンス 代表取締役 河瀬氏 − スマートロックロボット「Akerun」

Akerun(アケルン)はソラコムのオフィスでも便利に使わせていただいております。
どんどん人が増えていくオフィスでいちいち合鍵を作るのも大変ですし、本格的な電子錠を設置するのは難しそうなので Akerun が大活躍です。オフィスのお掃除に来ていただいている家事サービス業者の方にも Akerun のおかげでキーを渡すことができています。

そんな Akerun に、遠隔から鍵の操作ができる Akerun Remote が登場です。Akerun Remote には SORACOM Air をお使いいただいています。ありがとうございます!

株式会社チカク 共同創業者兼代表取締役 梶原氏 – 実家のテレビに、動画をおくる「まごチャンネル」

まごチャンネルは、おじいちゃん・おばあちゃんの家のテレビに繋いでおくと、そこにスマホなどを使って孫の写真やビデオを送信して貯めることができ、おじいちゃん・おばあちゃんがいつでもテレビを使って簡単に孫の姿が見られるというデバイスです。テレビにあたかも孫専用チャンネルが増えたかのような感じになるようです。

IT 機器の操作が苦手なおじいちゃん・おばあちゃんでもテレビの操作くらいはできるので、これは良いですね!
発売されたら個人的に購入して実家に設置しまいそうです。

新しいデータが届いているとまごちゃんねるのデバイスのランプが優しく灯ってお知らせするとか、おじいちゃん・おばあちゃんがまごチャンネルにチャンネルを合わせて視聴を開始するとそれがスマホに通知されるというあたりのゆるふわなつながり感にぐっと来ました。

まごチャンネルさんにも SORACOM Air をお使いいただいています!

株式会社Z-Works 代表取締役社長 小川氏 – 自宅見守りIoTシステム「LiveConnect」

「IoT による がんばらない介護」というフレーズが印象的な Z-Works(ジーワークス)様の LiveConnect(ライブ コネクト)。SORACOM Developer Conference #0 の LT で 18 人の登壇者の頂点に立ったこちらの製品はやはりタダモノではありません。

プレゼン終了後の場内からは「すでに30種類もセンサーを持っているなんて・・・圧倒的じゃないか」という声が聞こえてきましたがまさにその通りだと思いました。

Z-Works さんにも SORACOM 入ってます。

ノバルス株式会社 代表取締役 岡部氏 – 単三乾電池型のIoT機器「MaBeee」

最近衝撃的なデビューをした、乾電池型 IoT デバイスとも言える MaBeee。乾電池の出力をスマホからコントロールできるって聞いただけでいろいろ想像が掻き立てられますよね。
乾電池という身近なモノは小学生でも使えるので、これが普及してくれると IoT の裾野が一気に広がる感じがしますね。

株式会社Strobo 代表取締役 業天氏 – スマートオフィスチェア「cuxino(クッシーノ)」

“Sitting is the new smoking” この衝撃的なフレーズ。私も職業柄1日18時間くらい座りっぱなしなので気になるところです。

健康の面だけでなく、席を立った瞬間にパソコンのスクリーンをロックとか未来感がありますね。

株式会社ライナフ 代表取締役 滝沢氏 – 不動産時間貸しポータルサイト「シェアルーミング」

ジャパ○ット高○社長のものまね(?)で始まったピッチ(笑)、NinjaLock の価格がしっかりと頭に叩きこまれたところでどんどん話にのめり込んでいく自分がいました。

滝沢社長は不動産業界のご出身ということで、他のスマートロックメーカーとは異なる視点で事業を始められたという印象を持ちました。特に、スマートロックデバイスはライナフ様のビジョンを実現するためのひとつの手段という位置づけで、そのスケールの壮大さにしびれました。

Airbnb のようなスペース(空間)のシェアが流行の兆しを見せていますが、そういったところで起こりえる様々な問題を現実的に解決してくれそうなサービスですね。
また、不動産は自動車と並ぶ巨大産業ですのでいくつもの大きなビジネスチャンスがありそうだと思いました。

アレグロスマート株式会社 チーフアーキテクト 須江氏 – IoTプラットフォーム「AllegroSmart Cloud Services」

ソラコムと同様「IoT Platform」を掲げる AllegroSmart(アレグロスマート)様。
とはいえソラコムの競合というわけではなく、アレグロスマート様のプラットフォームはソラコムよりも上位レイヤをカバーされているので、ソラコムと組み合わせて使っていただけるととても便利なのではないかと思われます。

実際に、神奈川県の山に設置されている気象センサー監視システムのデモを見せていただきましたが、アレグロスマートさんのプラットフォームを活用することでこれがものの数日で構築できてしまうというのには大変驚きました。

みんなが直面するであろう難しい問題をプラットフォーム側が解決しておくことで、プラットフォームのユーザーさんが本来の領域に集中できるというのは、ソラコムの目指すところと共通するところでもあります。

Kisvin Science株式会社 西岡氏 – センサーを活用したワイナリー支援システム

私は個人的には Zinfandel という品種のぶどうから作られたカリフォルニアワインの野性味が大好きなのですが、日本ではあまり知られておらずなかなか売っているのを見かけることがありません。なので偶然売っているのを見かけると必ずと言っていいほど買ってしまいます。そんな Zinfandel の畑を山梨県に保有されているということで一気に私のテンションはこの日の最高潮に!
創業者の方々のバックグラウンドもさることながら、農業のことはまったくわからない私のような者にもすごくしっかりとした裏付けがあることがわかり、すぐに実用的に使えそうなシステムなのではないかと感じました。
機会があればもっとじっくりとお話を伺いたいと思いました。

会場内の風景2

カジュアルチャット

ピッチのあとは、投資家・弁護士・メディアの方々と弊社 CEO 玉川によるカジュアルチャットでした。

カジュアルチャット登壇者の皆様

アーキタイプ中嶋様には SORACOM の発表した新サービス、UDP to HTTP(S) にグッと来たとおっしゃって頂きました。
ソラコムがお客様の声を聞きながら迅速に製品に反映させていった点と、お客様の側でもバッテリー消費を少しでも減らすことでユーザビリティを高めることを追求する姿勢を評価していただいてのことと思います。大変光栄です。

WiL 松本様は、スタートアップに対して資金提供という直接的な手段だけではなく、WiL と関連のあるソニーや日産、IDEO のデザイナーなどを紹介することでスタートアップ企業を応援することができるかもしれないというようなことをおっしゃってくださいました。
そんな素晴らしいコラボレーションを実現するためには、まずは松本様との友好を深める必要がありますね。
今回のようなイベントを是非利用して、お近づきになってみていただければと思います。

投資家のお二方は共通して「作ってる人自身がユーザーとして使いたいと思うようなプロダクトでないと投資しない」というようなことをおっしゃっていたかと思います。当たり前といえば当たり前のようにも聞こえますが、自分で作ってるサービスを自分で利用する、これってなかなか実践は難しいのではないでしょうか?
そんな私は SORACOM Air を自分で個人的に買ってRaspberry Piなどで遊んでいます。ほかのソラコム社員もみな SORACOM Air や Beam をドッグフーディングしています。

そして投資家のお二人が、この日ピッチを行った 8 社の中で一番投資したいスタートアップとして挙げられていたのは Kisvin Science でした。
お二方とも「ワインが好きだから」と茶化した感じでおっしゃっていましたが、私はその彼らの眼の奥の「儲かりそう・・・」と言わんばかりの鋭い光を見逃しませんでした。

続いては弁護士の水島様。水島様は弁護士という肩書のみならず、パーソナルモビリティWHILLの創業メンバーであったりといった異色の経歴を持つスーパーマンです。実はソラコムはそんなスーパーマンである水島さんにいろいろな面で面倒を見ていただいています!法務面ではもちろんのこと、資金調達のロードマップやビジネス戦略にいたるまで非常に強力にサポートしていただいていて、水島さんの存在なしにはソラコムは今のような姿にはなっていなかったと思います。

スタートアップ企業の皆様も、ぜひ水島さんのようなスーパーマンを味方につけると良いのではないかと思います。
そんなスーパーマンと知り合いになれるチャンス、それがソラコム主催イベントです。そんなイベントに無料で参加できるんだから、ソラコムって太っ腹!!

最後は THE BRIDGE というメディアを主催されている平野様。
数多くのスタートアップと向き合ってきた平野様の目から見ると、Z-Works さんの LiveConnect のようなプロダクトは記事を書きやすいし一般の人の問題意識に訴えているので記事も読まれやすい、というようなことをおっしゃっていたかと思います。
みなさまもメディアを通じて製品を PR しようとする際には参考になるご意見ではないでしょうか。

また、会場の方からのご質問で「どうやったら良い記者さんと知り合えますか?」というようなことを訊かれていたのに対し、「メディアの人はメディアの人同士の横のつながりが実はあって、優秀な人ほどそういうつながりを持っているので、記者に別の記者を紹介してもらうのが良い」という、私が勝手に抱いていたイメージとは異なった回答があったのが意外で面白かったです。ちなみに私の勝手な想像というのは、記者さん同士はライバル関係にあって、どちらかというと敵対し合っていて記事のネタをみすみす他の人に紹介したりせず、自分だけで囲い込んでしまっているものかと想像していました。お恥ずかしい。

スタートアップの皆様には、ぜひこのような機会を通じて投資家・メディア・弁護士といった方と顔見知りになって自社プロダクトを知ってもらい、ひいてはもっと深くコミット(投資、業務提携など)してもらうきっかけとしていただければと思います。

展示ブース

カジュアルチャット終了後の、参加者同士の交流タイム。会場後方の展示ブースにはものすごいひとだかりができていました。

今回は以下の5社様にデバイス等を展示していただきました。
Z-Works LiveConnect
ライナフ Ninja Lock
Strobo Cuxino(スマートチェアは大きかったのでチラシのみ)
ノバルス MaBeee
メカトラックス 3GPi

Z-Works、ライナフ、Strobo、ノバルスの4社様にはピッチでお話いただいたので、ここではメカトラックス様をご紹介したいと思います。

メカトラックス 3GPi

はるばる福岡県からお越しいただいたメカトラックス様。Raspberry Pi に載せることで簡単に SIM を使って 3G 通信を行うことができる 3GPi(スリージーパイ)という製品を展示していただきました。展示ブースの中で一番最後まで人の波が途切れず、会場の参加者の皆様の注目を集めていた感じがします。

3GPi もソラコム対応済みですのでみなさま Raspberry Pi で SORACOM Air をお使いの際にはぜひ 3GPi をご検討してみていただければと思います。

電子/通信機器/組込機器の開発-メカトラックス株式会社

さいごに

いかがでしたでしょうか?当日の盛り上がりを少しでもお伝えできたとしたら幸いです。

ソラコムでは、今後もこのようないろいろな業種・立場の方々のコラボレーションの場を作っていき、世の中にインパクトを与えるスタートアップを生み出すためのプラットフォームになっていきたいと考えておりますので、「こんなイベントがあったらいいのに」とか「こんな業界の人達と繋がりたい」といったご要望をどしどしお寄せいただけますと幸いでございます。